鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2004年度 バックナンバー

VOL.6

愛媛県中小企業家同友会が創立され20年目に当たる今年は改めて歴史に学ぶべき時だ。バブル景気の引き金となった“プラザ合意”の年に生まれた愛媛同友会は“平成不況”と“普況(普通の不況と言われる造語)”の連続の中で三位一体(労使見解を学び、経営指針を確立し、社員教育を実践する)の経営を提唱し会員企業で実践してきた。同時に、自主・民主・連帯の精神で自主・自立の中小企業家団体として、幾多の困難を乗り越えてきた。

 

設立当初から、「同友会理念とは」「良い会社とは、良い経営者とは、良い経営環境とは」を率直に、真剣に、そして愚直に、絶えず会内で問いかけあってきた。それが愛媛同友会の伝統であり、会風でもある。

 

愛媛同友会活動の柱である“三位一体の考え方”の基礎の上に、インターンシップやチャレンジジョブ事業そして景況調査(EDOR)、企業評価プログラム等々の“産学官金連携”活動が今、展開されつつある。

 

同友会の歴史を創造してきた会員企業の実践に学び、会員一人ひとりが自らの活動に誇りと喜びを実感できる機会と場を創出するときだ。そして愛媛同友会の存在価値に確信し夢と希望を語り合える仲間を創造することだ。

 

発達科学を専門としている二宮厚美氏(神戸大学)は「一人ひとりの人間発達を正面にすえること、これがなければ、どんな組織も改革できない」との言葉は、20年の節目を迎えた愛媛同友会にとって重要な警句だ。企業、同友会、学校、あらゆる人間集団を人間発達の視点からとらえ直すことが新たな歴史をつくる鍵だと実感している。

 

VOL.5

年始に会員増強の嬉しい知らせがあった。

 

レストランを営む真鍋明会員からの知らせだ。発端は元旦の地元ラジオ番組に出演した真鍋明会員が、「夢の実現や人生観、経営観、そして同友会での学びについて縦横無尽に話した。」ことに始まる。数日後、ラジオ番組を聴いた経営者から同友会に入会したいとの連絡が真鍋明会員に入ったとのこと。

 

「挨拶に来訪した経営者を同友会に勧め入会約束ができた。」との連絡が建設業を営む久保安正会員からあった。その経営者は、同友会会員であった父親の急逝で地元に戻り後継することになった。久保安正会員も後継者であり、自らの学びと実践を話し、懇切丁寧に相談にのったとのこと。

 

同友会への入会動機は多岐多様である。先日も経営指針作成を動機にインターネットで同友会を調べた経営者から入会したいとの連絡があった。今の情勢は、経営者が質の高い学びの場を同友会に求めており、その期待に応えられるかが同友会に問われている。

 

一方で人間的な暖かさも求めている。というのも経営者は悩み多く、孤独感を持った人が多いからだ。そしてその扉を開くのは「共に学び、共に育つ」ことを実践している同友会会会員だ。同友会で自己研鑽を積み企業革新をはかり、強じんな体質の企業になった事例を示すことが会員増強の最大の説得力である。

 

同友会は時代を切り拓き、企業変革をのぞむ「最も良識のある元気な経営者団体」であることを企業内外に広く発信する時だ。

 

VOL.4

今年の“えと”は酉(とり)です。酉は、「酒を醸造する器の形に象(かたどる)る」とあり、甕(かめ)の中に溜まっている麹(こうじ)の発酵を表す象形文字です。酒は、「成る」「老いる」等の意味があり、中に醸(

かも)されている新しい勢力の爆発、蒸発を意味すると言われています。

 

そこで、昔からこの年には変革が起こったり、新しい勢力が作られたりするとされています。“激動の時代を良き友”とすることを方針に掲げた愛媛同友会も今年、設立20年を迎えます。過去、厳しい経営環境でもマンネリに陥らず変革の道を一歩ずつ進み成果をつくってきた会員に学ぶ年でもあります。

 

昨年、過去に二回話を聞いたことのある会員の経営実践を例会で聞く機会がありました。感心したことは、過去の経営実践の分析がより鋭くなっていること、前回の時とは違う視点からの掘り下げがされているのです。ですから、現状の問題提起もリアルに迫ってきます。その会員曰く「過去の体験は自己変革の真剣さの度合いと位置づけて総括した」とのこと。過去を総括し、次の課題にどう生かすかは現在の経営姿勢と問題意識が決め手となる典型です。

 

改めて同友会では「報告者が一番勉強になる」意味をかみしめせられました。経営実践報告は、過去から未来につながる経営者自身の自己分析の機会が与えられることです。しかも聞く側から温かく、時には辛らつな質問や意見が寄せられます。だれもが自分の経営と重ね合わせて聞いていますから的確です。ここでも報告者は得がたい知恵を授かることになります。

 

時々「例会がマンネリ化した」との“ぼやき”を聞くことがあります。経営にマンネリ化は許されるのでしょうか。たちまち破局の道です。であれば前向きに変革の精神を持って取り組む、その姿勢から学びあう例会は必ず感動の湧き上がる例会になるはずです。今年の例会は“酉”の精神を発揮しようではありませんか。

 

VOL.3

“「もどき・つもり・ごっこ」になってはいないか?”この指摘は、同友会運動を担う人たち(リーダー)に対する赤石義博・中同協会長の警句です。

 

会合に積極的に参加し経営指針書を作成している会員の中にも、実際の社内での姿や社員の雰囲気が同友会での姿と反比例していると感じることがあります。つまり同友会での学びが社内に浸透していないということです。

 

こういう声も聞きます。「同友会理念や精神は分かるが、業界や社内では“なじまない”。」「理屈は分かるが、どうすれば実践できるかに迷っている。」せっかく作った経営指針書も机に閉まったままの会員もいます。

 

こういう悩みは、古くて新しいテーマのひとつです。しかし、実践する権利を持っているのはその本人です。

 

かつて作家の吉川英治氏は「やさしい、むずかしい、どっちもほんとだ。しかし、むずかしい道を踏んで。踏んで、踏み越えて、真にむずかしいことを苦悩した上で、初めてやさしい。それを知った者でないと、本物ではない。」と語りました。

 

同友会運動に関わる人たちは、同友会活動と経営活動を車の両輪として理解し、積極的に謙虚に学び続けることが求められており、それが本物に近づく道だと思うのですが。

 

同友会に参加し、どんな学びをしているのでしょうか?実は参加する事で学んでいると錯覚しているのではないでしょうか?時代に対応し企業課題を解決するには学びたい事と、学ぶべき事の2つがあるのではないか?を問題提起したいと思います。

 

VOL.2 『景況調査を企業に活かす』

「景況グラフを見ていると景気が上向いている時はレストラン等の外食に出向き、景気が下降の時は弁当を利用していることがわかる。これを今後の販売戦略に活かしたい。」松山市内で弁当店を営む松本光一会員の景況調査判定会議での話し。

 

最近、景況調査データを経営に活用しているという声を聞くことが増えてきた。

 

2001年4月から愛媛大学総合地域政策研究会と愛媛同友会は四半期毎に共同で景況調査(名称・EDOR)を実施している。今回(7月~9月期)で6回目を終えた。報道機関にもその都度取り上げられている。

 

調査対象は会員企業。回収率は平均70%前後、比較的高い数字と思われるが「統計学的な信頼性を高めるには、今の回収率を維持し高めること。」と先生方は指摘する。

 

景況調査の目的は、県内経済の動向を中小企業レベルで把握し【1】行政への政策提言に反映させること。【2】中小企業の経営政策への基礎データとすることである【3】景況調査スタッフの愛媛大学S准教授は「百回を目標に実施し県内での役割を不動のものとしたい」。と夢を語る。

 

小さな一歩ではあるが、科学的経営を標榜する同友会にとって景況調査実施の一歩は大きい。

 

VOL.1

異常気象のせいか今年は台風の上陸が多い。列島を台風の猛威が襲った。四国や愛媛でも甚大な被害が出た。会員皆さんも被害にあわれた方が少なからずいた。紙面をかりてお見舞い申し上げます。

 

台風一過の青空がまぶしい高知で青年経営者全国交流会が開催された。メインテーマは、「青年経営者よ、志高く時代に挑み、未来を拓こう」さすがは自由民権運動発祥の地。そのテーマに魅了されたのか愛媛から24名が参加した。

 

須賀会員が「志と経営のはざまで・・・」をテーマに、起業から現在の経営問題を率直に提起。創業者、後継者、幹部社員と全国から集まった多様な参加者は、「何のために経営をしているのか。」「志を理念に高めているのか。」を問いあった。

 

分科会には、愛媛の会員と愛媛大学の和田先生も応援に駆けつけた。座長の小田会員のリードよく、心なごみ本質に迫る分科会となった。

 

かつてフランスの詩人ルイ・アラゴンは「人は連帯を実感した時に幸せを感じる」と言った。仲間たちと一緒に歩いた高知の夜空は連帯の星の数々。連帯を実感できる企業や同友会をつくることを誓いあった青年経営者全国交流会となった。

 

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