鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2014年度 バックナンバー

VOL.116 「リーダー」と「ボス」の違い

2月16に開催された第四回経営フォーラムは、目標を大きく上回り369名の参加者を集め、成功裡に終わることが出来ました。成功の要因は、いくつかありますが最大の要因は、中周作実行委員長を中心にした12名の実行委員の「リーダーシップ」にあります。今回は、「リーダー」と「ボス」の違いについて考えたいと思います。

 

同友会会員の皆さんは、リーダーを目指している人の集まりです。ところで、「ボス」と「リーダー」の違いをご存知でしょうか?辞典を見ても、「ボス」=長、親方、領袖、「リーダー」=指導者、先導者、首領などあまり大きな違いはありません。

 

アメリカでは親しみを込めて大統領を“ボス”とも呼んでいます。しかし、日本では、「ボス」は実力はあるが、親分タイプで前近代的イメージ。「リーダー」は、先見性と行動力に富み、大勢の意見をまとめていく近代的イメージのようです。

 

同友会では、かねてから「ボス支配をしない、されない」同友会づくりを目指してきました。そのためにも、一人一人の会員が主人公としての認識を持つことが「鍵」です。これは、皆さんの企業にも共通することですし、私たちが生活している地域社会にも同様です。

 

かつて、国吉昌晴・中同協副会長は“同友会における「ボス」と「リーダー」の違い”を『成長のとまった人間はボス化する。知的好奇心にあふれ、謙虚に人の話を聞き、成長をつづけていくことがリーダーの条件』と定義づけました。

 

「リーダー」を目指す私たちにとっては警鐘であり、心にとどめておくべき言葉です。十二人の実行委員はこの言葉をまさに、実践してきたと言えます。私たちの日頃の心と行動は「リーダー」なのか?それとも「ボス」なのか?常に問いかけましょう。そのことが、「リーダー」への道です。

VOL.115 “中小企業が輝く時代”とは・・・同友会運動の目指す世の中

想像してごらん 天国なんて無いんだと ほら、簡単でしょう?・・・・僕のことを夢想家だと言うかもしれないね でも僕は一人じゃないはず いつかあなたもみんな仲間になって そして世界はきっとひとつになるんだ』この一節は、故ジョン・レノンの「イマジン」の詩です。

 

先日、友人である愛媛新聞社の鈴木孝裕さんがDJを務めるラジオ番組「デスクの手帳」にゲストで登場した時に『中小企業が輝く時代とは?どういう時代ですか?』の質問を受けました。故・宇高昭造さんに同じ質問をした時の宇高さんの回答をその時に紹介しました。

 

『国政選挙で投票率が八割以上の状態ですね。そういう時は、国民の人生の命運と国の命運とが重なっている時です。それは、自分の人生に責任を持つ人がたくさん存在しているということだと思います』

・・・『本物とニセモノを見極め、見抜く人がたくさんいる社会です。人をはじめ商品やサービス、オペレーション等々、本物をつくり、世の中に提供しているのは中小企業でしょう?』

・・・『そういう中小企業になるのを応援するのが同友会の役割でしょう。そういう世の中になった時に、本物の中小企業に育っているかが中小企業の正念場です。その時が、中小企業が輝く時代ですね。』

・・・宇高さんの話を聞いて同友会運動に関わるひとりとして、身が引き締まる思いをしたのを昨日のことのように思い出しました。

 

そういえば、昨年イギリスのスコットランドで八割を超える国民投票がありました。まさに国民と国の命運をかけた選挙でした。ひるがえって日本の年末の国政選挙は戦後史上最低の五十二%の投票率でした。日本の民主主義の成熟度が問われた選挙でもありました。

 

本物とニセモノを見極め、見抜く人をたくさん育てることが同友会運動の使命と役割であり、“中小企業が輝く時代”を想像すると同時に、現実をつくる夢想家的運動家?になることを決意しました。

VOL.114 “激動を良き友”とするには・・・

2015年の新春を迎え、夢と希望に溢れ強い決意を固められている事と思います。

 

2014年は、年末に衆議院選挙が行われ、戦後史上最低の52.6%の得票率の中、自公政権が過半数を獲得。経済においては四月の消費税率の3%アップに始まり円安が続き、先行きに明るい兆しが感じられない激動の一年でした。

 

“激動を良き友”とするリーダーには、世界や人間、事物の変化と発展の過程を本質的に理解するための方法、法則を学び身に着けることが大切です。

 

ご存知のように中国には揚子江や黄河という大河があります。地図上で中国の国を全体として見ると、揚子江や黄河は西から東に流れています。しかし、途中の部分を観るとある所は北に向って、ある所は全く逆に西に向って流れています。はたまた現場では、北に向かっているのか南に向かっているのか分かりません。

 

私たちは、とかく全体や本質を観る事を忘れて、その場やその部分だけを観ているのかもしれません。大切なのは、全体と本質を観る力と、時間で物事を測る力です。

 

たとえば経営者は経営に悩み、社員は働きがいが持てない事に悩んでいます。人間は明確な目標を持って、計画を忘れなければ自分の描いた着地点にたどり着く特性を持っています。

 

迷った時は、初心に戻ること=原点に戻ることが大切です。何故、経営をしているのか?何故、この会社に入社したのか?何故、同友会運動をしているのか?それを問い続けると本来の意味と目的に向かい合うことが出来ます。

 

部分ばかり観て、うわついた情報に惑わされると横道にそれたりします。大切なのは、世の中や人間、事物の変化と成長・発展の過程・法則を本質的に理解する力が必要なのです。そうすると世の中の発展の法則が観えてきます。揚子江や黄河のように大きく長期的な流れで自分の人生や世の中の動きを観る“激動を良き友”とする一年としてまいりましょう。

VOL.113 経営者こそ、現代における最高の教育者であり“憧れられる人”~学びを価値あるものに~

先日、愛媛大学提供講座で学生の皆さんにいくつかのテーマをお話させていただく機会がありました。そのひとつが『働く』ことです。

本来、働くとは人間の目的であり、生きがいそのものです。生きること全てでもあります。

 

しかし、働くことは生活の手段になっていませんか?働くことは苦労であって、そのあとの楽しみ、生活を豊かにするためだけの手段になっていませんか?

 

経営者にとって働くことは何でしょうか?経営者になったきっかけはどうあれ、個人資産も含めて全てを企業経営に投入し、24時間経営の責任から逃れられない。社員や取引先からアテにされ、この期待を裏切ることはできない。働くことは、経営者の全生活であり、人生の目的、生きがいそのものといってよいでしょう。

 

では、社員の皆さんにとってはどうでしょうか?社員の生きがいは職場を離れたところにありませんか?そこで“鍵”になるのは、働く中で生きがいを見出すことであり、社員の人生の目的と企業の目的を合わせる『経営指針(経営理念・経営方針・経営計画の総称』が必要になります。

 

そのためにも、“経営者は現代における最高の教育者”になることが求められています。最高の経営者とは、社員や顧客、社会から“憧れられる人”のことです。“憧れられる人”とは、『失敗をオープンにすると同時に失敗を教訓として、誰でもが活用にできるように法則化する人』のことです。

 

因みに、教訓とは、失敗の本質を見極め、失敗の原理原則を明らかにすること。法則とは、教訓を誰もが理解でき、活用できるようにすることです。

 

『そんなこと、言われても』という声が聞こえてきそうですが。ご安心下さい。最高の経営者になるために、同友会運動があります。ですから、同友会の最高の学びとは、成功からだけではなく、失敗の法則から学ぶことなのです。なぜなら、成功への道はたくさんの失敗から学ぶことが真理だからです。

 

経営者は失敗の宝庫であり、筆者も失敗の見本です。みなさんは、最高の学びの場としての同友会運動に選んで入会・参加しているのです。多いに学び、実践しましょう。実践しないと学びの意味は分かっても“価値”あるものになりません。なぜなら経営者は、『成果』をつくる人だからです。

VOL.112  愛媛同友会創立の原点と未来への鍵とは…自己変革を通して、憧れの存在になる会…

愛媛同友会創立30周年(1985年9月14日創立)を来年に控え、先月号の会報誌から、「温故知新」シリーズとして会員や事務局がインタビュー形式で登場しています。登場する皆さんは同友会運動と企業経営を車の両輪として歩んでいる同友会のリーダーの皆さんです。

 

少なからず会員の多くは、この30年間で企業を変革して成長発展させてきました。共通しているのは、苦難の中でも、夢と理念を掲げ、現状認識を怠らず、真摯に同友会で学び自己と企業の変革を進めてきたことです。

 

私自身、同友会運動と30年近く関わらせていただき、同友会運動をひとことで表すならば「自己変革を通して、社員やお客さん、地域社会から『憧れの存在』になる会」だと思います。皆さんが『憧れの存在』として自己変革を怠らないことが同友会運動の原動力でもあり、魅力です。

 

成長発展を歩んでいる会員はもちろんのこと、“苦闘しながら進んでいる友人”、“再生の道を歩んでいる友人”に私の好きな言葉の一節を贈りたいと思いました。『わたしは、困難な中で笑える者、苦しみを通して強くなる者、非難されて勇気を出す者を愛する』(アメリカ独立革命に大きな影響を与えたトマス・ペイン言葉)

 

30年前、この地に同友会は存在しませんでした。創立当時の先輩たちが苦闘しながらも同友会の基盤を築き、「人と人とをつなぐ連帯の精神を大切に、地域社会と共に歩む企業づくり」を松山、四国中央、今治、東温、伊予松前と広げてきました。

 

そして今、30周年を控え、創立の原点と未来への鍵となる“人と人をつなぐ連帯の精神”である愛媛同友会三十年の歴史が継承され、人々の幸せと豊かさを創造する中小企業家の運動が愛媛の隅々に広がるのを願ってやみません。

VOL.111  “治に居て乱を忘れず”

言葉は、実践によって理解が深まるという体験をしています。それは、以前にもこの「陶冶」で書いた『治に居て乱を忘れず』という“ことわざ”です。同友会では、如何なる境遇にも耐えて、ひたすら前向きに挑戦する経営姿勢を学びますが、経営が危機に直面して縮小や整理を余儀なくされ、一歩後退しても再建をはかるという学びが少ないのではと思います。

 

不透明な景気の中で、以前は優良企業として注目され脚光を浴びていた企業が人員整理や倒産の憂き目にあう例は同友会でも少なからずあります。成功の体験からだけではなく、“失敗と再生”の体験から、よりよく学ぶことは同友会会員の学び方の基本です。

 

人間は、病を得て健康の有難さを実感することが多々あります。大病と向き合っている私の体験は、病に立ち向かう姿勢の大切さを学んでいることです。無気力感に陥りすべてを暗く考える時や、社会復帰をあせり心のゆとりと安定を失っている時など・・・。私自身、学んでいるのは、同友会理念同様に、病気と対立せず“共に歩む”生き方です。

 

『治に居て乱を忘れず』とは、個人にふりかかった災難や経営危機に陥った時の、危機管理が大切だという事です。日常に安心しすぎず、危機管理を甘く見すぎることも自戒せねばならないのではないかと思います。但し、危機に直面しても、“慌てず、騒がず、対応する”ことが基本だと感じる今日この頃です。

VOL.110  “進みながら強くなる”生き方

真夏の夜が続く今日この頃、原稿の締め切りが迫りますが、どうにも筆が乗らない時があります。そんなときは、一行でも二行でもいいから書き出してみます。そうすると腕の動きにつられて、文章が頭に浮かんできます。

 

勉強は「強いて勉める」と書くように、進んでやる人はあまりいないのではないかと思います。これもはかどらせるコツは、まず机に座ること。歴史学者のトインビー博士が、毎朝九時ごろには必ず机に向かうことを日課にしていたとのこと。何事も、やってみる、動いてみることで、開けること、身につくことがあります。

 

事業の失敗で大借金を抱えた作家のバルザックは苦境を乗り越えたとき、あるラテン語を標語にしていました。「進みながら強くなる」

この言葉に出会い、準備ばかりにこだわって苦しんでいた若い頃の自分を思い出しました。「完ぺき主義者で、強くなってから進もうと考えて下準備ばかりしていたのでは、強くなったと思ったときには、もうすべて終わっている」と。

 

人生も、それに通じるものがあると思います。私自身も病気と向き合うことで、悩める他人のために動き、語り、自他ともの成長へ進む人生を送っています。そう思うと再生の道を歩んでいる私の友人も同じ体験をしているでしょうか。「強くなってから進む」より、「進みながら強くなる」生き方もあります。

VOL.109 未来が開ける『天王山』とは

あの感動と寝不足が続いたサッカーワールドカップ・ブラジル大会も終わりつつあります。ブラジル大会は経営環境の厳しさからワールドカップ開催を返上せよ!のデモ行進も数多くありました。

 

いざ、ワールドカップが始まれば熱烈な支援の声。それは、栄光と挫折。歓喜と悲嘆。四年に一度しかめぐりこない舞台だからこそ、鮮烈なドラマが胸にやきつきます。まさに一試合一試合が『天王山』の連続です。

 

勝敗の重要な分岐点のことを『天王山』と言います。1582年6月羽柴(豊臣)秀吉が明智光秀を破った「山崎の戦い」を源とする言葉です。

本能寺に散った主君・信長の仇を討ち、勝敗を決したのが山崎にある『天王山』でした。ここは、京都と大阪を結ぶ要衝。この山を制し天下獲りの一歩を進めました。

 

激闘が続くサッカーワールドカップ。まさに『天王山』の連続です。今大会で目立つのは逆転試合の多さと番狂わせです。技量は紙一重の最高レベルの戦いだからこそ、勝敗を分けるのは『あきらめない心、折れない心』と、『勢い』であることを痛感します。

 

人生にも、ここを乗り越えれば未来が大きく開けるという『天王山』があります。恐縮ですが病に臥せてから、『天王山』を迎える筆者に形を変え数多くの励ましをいただきます。先日、宮城同友会事務局長の伊東威さんから頂いたハガキには、筆者が『希望の一本松』と同じ存在だと励まされると同時に、裏面に『希望の一本松』の写真が掲載されていました。“凛”としたその姿は筆者を大いに励ますものでした。『天王山』を迎えている皆さん!手を取り合って共に前に進みましょう。

VOL.108 人生には『失敗』はない。心が折れそうになった時には、友と語ろう!

29年前の愛媛同友会設立準備で苦戦している時に香川同友会の三宅昭二さんから『願わくば、われに七難八苦を与えたまえ』(尼子家再興で有名な山中鹿之助幸盛) の言葉を私への励ましにいただいたことを想いだします。大けがを乗り越え大関を張った元琴風の尾車親方は、「『人生』というのは、とてつもなく大きな『ジグソーパズル』のようなもの」と語っています。

 

ジグソーパズルは、さまざまな形のピースを、悩み悩み、はめ込み絵柄を完成させていきます。その過程は人生に似ています。夢や目標という“絵柄”を決め、行動を起こせば、苦労や挫折はつきもの。決して失敗ではありません。全てが“絵柄”を完成させるための欠かせない“ピース”です。

 

人生、順風の時もあれば逆風の時もあります。ですが、「悩みを通して智はきたる」の格言にあるように、「これまでの苦労には、全部意味があり、すべて自分の財産になった。と分かるようになった時にこそ、人生の価値が分かり使命が自覚できるようになるのではないですか。」と、心が折れそうになった私に、ある友から励まされました。

 

苦戦しているその友を想う時に、「夢や目標に生きる人生に一切の無駄はない。」と確信します。心が折れそうになった時は、今日も一日やるべきことをやり、励まし合える友と語り合いましょう。

VOL.107 “世の中は捨てたものではない”と言える大人になろう

三年目を迎えた愛媛同友会主催の合同入社式&新入社員研修会が3月28日に開催され15社31名の若者が社会に旅立ちました。

 

夢多き理想に燃える若者を見て思い起こされるのが三月十日に亡くなられた宇高昭造会員の言葉です。宇高さんは「世の中は『雲の下』。雲の下は雨が降り、風が吹く。『傘に入れて』と言う人や、傘を置いていたら盗っていく人もいる。社会には、不条理な側面もあります。一方で雲の上は、雨が降らず太陽が常にさんさんと降り注ぎ、心地よい理想の社会であり、この時が青春時代でもあります。」大事なのは、この青春時代に理想を語り合える経験をして、世の中を肯定的に考えられる社会人になることが鍵です。それが世の中の不条理を条理に変える、マイナスをプラスに変える力を蓄えることになるのです。」と話されました。

 

宇高さんの言葉から想像するには、若者を迎える企業の第一歩は「世の中は捨てたものではない」という姿を若者にしっかりと大人が見せつける事だと思います。そのためにも、私たち大人の集まりである同友会が理想を真正面から語り合う。企業や同友会が人間を全面発達させる世の中を実現するためにも“変わる、変わり続ける”ことだと若者を見て改めて思いました。


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