鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2010年度 バックナンバー

VOL.76

中小企業憲章が2010年6月に閣議決定され、その地方版と言われる中小企業振興基本条例運動が全国各地で旺盛に展開されています。

 

愛媛同友会でも東温支部二月支部例会で大阪大東支部長の山田茂さんを招き、『めざせ!輝く企業へ地域とともに』をテーマに地元行政関係者や商工会の皆さんと共に、条例と企業の関係について学びあいました。

 

輝く企業とは、商品やサービスがすぐれている、顧客や社員満足を高め、地域になくてはならない企業を実践していること。企業が輝くとは、人間が輝くこと、つまりその企業で働く社員が輝いているということです。

 

中小企業振興基本条例は、中小企業に政策的な光を与える環境づくりの法律ですが、中小企業が世の光となる、つまり『わたしたちの企業が輝く』主体的な運動でもあります。その努力を地域社会が認知してこそ、条例の共感を広げる事ができます。

 

企業は人間が成長する場であり、社員が生きがい、働きがいを見出し楽しく日々を送れる場です。地域の人たちも、その企業で働く社員に対しては仕事上も日常生活の上からも厚い信頼を寄せる企業を、地域の隅々に広げることこそが同友会運動の真髄です。2011年も新たな気持ちで光り輝く中小企業を目指してまいりましょう。

 

VOL.75

新年早々、心温まるニュースが全国津々浦々に広がっています。慈善の輪は、「タイガーマスク運動」と呼ばれています。「タイガーマスク」の主人公、伊達直人をなのる人が、児童養護施設や児童相談所の前に、ランドセルや文房具、野菜などを置いてゆく。

 

続けとばかりに、「あしたのジョー」も。伊達直人は孤児です。矢吹丈も孤児。「タイガーマスク」や「あしたのジョー」は、筆者世代の漫画の英雄であり、二人が苦悩しながらも数々の苦難を切り拓く姿を記憶している人も多いはずです。

 

孤児を悪役レスラーに育てる「虎の穴」に誘われ、プロレスの世界に入り孤児の施設に寄付する伊達直人。孤児なら誰でも助けたい伊達直人と、弱者を切り捨て勝者を育てる「虎の穴」との対立。「虎の穴」が伊達直人を葬ろうとリングに繰り出してくる残虐な相手に対し、試合ルールを守るか破るか迷うタイガーマスク・・・。

 

伊達直人の名で寄付する人も、彼のマスクの下の苦しみを胸に刻んでいるのかも知れません。児童養護施設に入っている子どもは3万人あまり。孤児よりも、虐待などで親と暮らせない子が多いと聞きます。

 

親の家出や死亡、離婚。虐待や子育て放棄等のニュースを聞くたびに、『地元で働き、地元で暮らす、人間らしく生きる社会』の実現が急がれていると感じます。寒波のもとで善意の火をともす「伊達直人」と「菅直人」を比べる人は、私だけではないと思います。

 

VOL.74

2011年の新春を迎え、夢と希望に溢れ強い決意を固められている事と思います。

 

2010年は、国内政治において、政権交代が行われ衆参“ねじれ”の不安定な一年。経済においては欧米経済の先行き不安などから円相場が急伸し15年ぶりの円高水準となり、政治同様に先行きに明るい兆しが感じられない苦しんだ一年でした。

 

しかし、南アフリカで開催されたサッカーワールドカップでは前評判を覆し華麗さはなくとも、泥臭く守りベスト16。第78回ノーベル賞では鈴木章氏、根岸英一氏が受賞するなど明るい話題もありました。また、六月には『中小企業憲章』が内閣決議されるなどの前進面もありました。どちらも日本の文化や要素を活かした事が結果につながったように思えます。

 

文化や要素と言えば、私たち中小企業は厳しい現実に耐えながら挑戦し続け、いつか厳しさを平常のものと受け止められるような強さを育んできました。そのことは、前向きな意味も意義もありますし、企業の発展には欠かせない要素でもあると同時に、不透明な時期には、社内の態勢をそこに持っていけるかどうかが『鍵』になります。

 

2011年は、伸び伸び生き生き。前向きに共に新しい仕事づくりに邁進できる仲間づくり運動を強め、われわれ中小企業が『地元で働き、地元で暮らす、人間らしく生きる社会』の実現をリードできる担い手であることを成果で示せる一年にしていきましょう。

 

VOL.73

ぬけるような秋空に恵まれた松山で「全社一丸、地域とともに生きる企業をめざして~『労使見解』の精神を柱にした企業の総合実践をすすめよう」をメインテーマに第二回人を生かす経営全国交流会が開催された。

 

十年ぶりの全国行事の開催として形だけではなく“人を生かす経営”そのものの中味を学ぶことにも重点を置き、例会などを活用して半年間にわたって準備した努力が実を結んだ交流会となった。

 

緊張の中で始まったオープニング“書道ガールズ”三島高校書道部による直筆のメインテーマが暗転から明転の中で掲揚。テーブル番号や水引リボン、実行委員が“お接待の精神”をいかんなく発揮した設営等々をふくめ、“愛媛同友会の持ち味”が随所にちりばめられていて参加者からも好評を得た。

 

分科会でも久保安正会員が岩本高之さん、藤原沙奈さんの二人の社員と登壇して報告。座長の宇高光重会員のリードよく「社員とともに七転び八起き」をテーマに、働くことを通して、喜びと誇りそしてやり甲斐を追求している“共に学び共に育ち合う実践”を率直に問題提起。

 

交流会の締めくくり記念講演でも“愛媛”の山本万喜雄先生が22年に及ぶ同友会運動との共学・共育の関係を通しての育ち合いの真髄を包み込むように講演。

 

詩人ルイ・アラゴンがかつて言った『人は連帯を実感した時に幸せを感じる』の言葉を交流会で実感したのは筆者だけではないと思う。

 

VOL.72

秋口に入り、景況は一段と厳しさを増しているのは第30回EDOR(7月~9月期景況調査)の中間状況で『厳しい』の声が多いことでも明らかです。

 

厳しい情勢を主体的に切り拓く方策を学び、経営に勇気と自信を深める目的で開かれているのが支部例会です。この間、入会された会員みなさんが異口同音に例会について話すのが『学びあう真剣さ、熱気、前向きな姿勢』です。

 

『知っていることと実践することとの間には、天と地ほどの差がある』との言葉はこの間、実感してきた言葉ですが、経営者としての学び方の真髄がここに込められています。

 

しかし、経営者が“学んで変わる”ことは口で言うほど簡単ではないことは筆者の体験からも想像できます。『これだ!』と信じる事を組織改革にぶつけ、組織内の意見を聞きつつも反対や消極の対立物を乗り越えて新しい境地を切り拓く。『あの人は変わった、成長した』との周りの評価は変革する姿勢を貫くなかで築かれるものです。

 

学びあい活動と並行して力を入れているのが、今月開催の「第二回人を生かす経営全国交流会」と123☆555作戦=「仲間づくり運動」です。周りの経営者、後継者、幹部社員にぜひ、交流会への参加と入会を勧めましょう。同友会で学び、自社の変革にどう役立ったのか、みずからの経験を話す事が肝心です。『こんな企業を目指そう!』と夢と目標を語り合う「人を生かす経営全国交流会」と123☆555作戦をこの秋、大いに広げましょう。

 

VOL.71

愛媛同友会が今年度から取り組んでいる、123☆555作戦運動にも熱が入ってきました。11月18日~19日に愛媛・松山で開催する『第二回人を生かす経営全国交流会』に向けて五百五十五名会員を目指しています。八月からは、中予の四支部では合同例会として『人を生かす経営』をテーマに経営指針・社員教育・共同求人の意味と価値を学び合い、各支部例会では、多くのゲスト参加で賑わっています。

 

123☆555作戦の目的は、経営に悩み、どうすればよいのか困っている経営者に声をかけ、悩んでいる会員も巻き込み、みんなで交流して同友会で切磋琢磨し合う仲間づくりを進めることです。

 

そのためには、会員訪問を行い同友会の元気な姿を会員自身の実体験を通して語ることが決め手です。学びあい活動で『わが社はどう変わったのか!』『入会して会社の課題が明確になったこと』などの自己と会社の変革のプロセスを素直に伝える。経営指針成文化セミナーに参加して強い体質の企業に転換できた事例などは最適です。

 

入会を勧めることは、相手への最大の親切であり、共に時代を切り拓く頼もしい仲間の知恵を得る事でもあります。特に、今回開催する『第二回人を生かす経営全国交流会』は、現在の経営危機を乗り越える鍵である『共に学び、共に育ち、共に生きる企業づくり』を学ぶチャンスでもあります。この秋は愛媛県内に同友会の風を巻き起こしましょう。

 

VOL.70

青空が広がる8月15日に、愛媛県戦没者追悼式に参列しました。戦争の痛ましさ、人間教育への責任と生きる事の重みを感じた一日でした。

 

ところで、2004年10月号から始まったコラム『陶冶』を執筆して今回で70回を数えました。そもそも陶冶(とうや)とは、「人間形成」のことを意味する古い表現で「教育」と同義です。近年は、ほとんど「人間形成」という言葉に置き換えられ使われています。

 

あまり使われなくなった背景には、『陶冶』の『陶』は、この熟語の字からして、容易に連想されることですが、人を焼き物でも作るように、型に合わせて、焼き固めるような行為を連想させるというのが一因となっているようです。

 

実はそれは誤解で人を教え、導くというのが本来の意味です。『冶』は立派なものに仕上げることの意味を持っています。型にはめ、意のままに教育するといった意味合いではないのです。それよりも、良い点をしっかり探し出し、かつ吟味して細心の注意をはらって立派な人に仕上げていく意味という説もあります。

 

このように考えると『陶冶』の言葉の持つ意味は、『共に学び、共に育ちあう』という同友会の教育理念に合致します。押しつけの教育ではなく、その人の自主性に心を寄せて育ち合う。11月に愛媛で開催される『人を生かす経営全国交流会』で今一度、『共に学び学び合い、共に育ち合う』真髄を学ぶ機会としませんか。

 

VOL.69

突然降って湧いた『消費税増税論議』などの不透明な政治に国民の審判が下った結果となった参議院選挙も終わり、政界の新勢力地図が確定しました。

 

国政選挙では政治家が国民の洗礼を受けますが、経営者は市場から常に評価を受けています。赤字決算は評価が悪いと考えなくてはならないでしょう。

 

産業構造の変化の中、多くの業種や業態で苦労を味わいながら転換を進めている会員企業も多くあります。また規制緩和で新規参入が可能になった企業も増えています。ここを経営者として『チャンス』ととらえるか『ピンチ』と考えるかが鍵で、それが盛衰を分けることになります。経営とは“環境適応業”と言われるゆえんです。

 

ところで、私たち中小企業家同友会が七年前から取り組んできた『中小企業憲章』が、6月に閣議決定され日本政府の方針となりました。運動の成果として率直に喜びたいと同時に、これからの中小企業にとって誠に意義深いものがあると考えます。

 

憲章にもあるように「地域経済の再生は中小企業が中心になって」と言われます。政界の“ねじれ現象”で懸念される政策不況と景気後退に対しては『中小企業憲章』を実行して景気対策を講じるチャンスであります。私たちも新しい経営感覚で果敢にチャレンジして成果を上げましょう。今夏は愛媛に会員企業の新しい風が吹きまくる事を期待しています。

 

VOL.68 『教育ではなく共育とは?』

先日、松江で開催された中四国代表者支部長交流会の席で愛媛同友会の強みについて尋ねられました。私は『共に学び、共に育つ会風』と答えました。そこで頭をよぎったのが「教育」ではなく『共育』の意味。

 

「教育」という言葉は英語のエデュケーションの訳語であり、語源は「引き出す」、つまり自己創出力を引き出す意味といいます。一方、訳語の「教育」は儒教色の強い熟語の転用であり、「上から下へ教え込む」、つまり教化や同化の意味に理解する傾向が強くあります。訳語で意味がすっかり変質しています。

 

自然科学の基礎などは教え込む事が必要かもしれません。しかし前提になるのは、本人の意欲ではないでしょうか。「教え込む」に傾斜した、また傾斜させたことに別の意図が、あったがどうか、そこが鍵ですが、ここではあえて問いません。ただ、同友会が掲げる『共育』理念は、英語の語源に近いのだと実感します。

 

しかもこの共育理念は、現場の体験の中で到達したところに重みがあります。しかし、『共に学び、共に育つ』は耳ざわりがよいのですが、果たして根源をつく学びと実践になっているかどうか。

 

11月に愛媛で開催される『人を生かす経営全国交流会』に向けて、学びと実践を今一度問い返す機会としたいと思います。

 

VOL.67+

「仲間と共に大変革(伝説)の一年に!共育・雇用・付加価値創造で地域をリードする同友会に成長しよう!」これは、4月28日に開かれた愛媛同友会第26回総会において採択された2010年度スローガンです。愛媛同友会が今年めざしていく方向がここに簡潔に示されています。

 

まずは、『共育』です。経営者と社員が、ともに学び、ともに育つ企業文化を育むことが全ての企業づくりの前提条件であり、第一優先順位です。今まで以上に『経営者と社員が共に育ち合う』関係をつくりましょう。

 

続いて『雇用』です。そのためにも、経営を維持し発展させる中小企業をつくりことです。そのためにも、経営指針を確立・運用する事が急務です。そして、一人でも多くの雇用を生む企業を育てることです。

 

最後に、『付加価値創造』です。常に頭を悩ます課題ですが。自社のサービスや商品等を見直し、時代が求めるモノに変化させ創造する“想像力”が求められます。

 

これら3つの『鍵』を支える『同友会づくり』は、「地域をリードする同友会」を目指して成長していきましょう。特に今年の11月18日・19日に愛媛同友会が担当して『人を生かす経営全国交流会』が開催されます。中小企業団体が地域を変えるという新たな歴史を刻む一歩としてまいりましょう。

 

VOL.67

桜前線が北上している今日この頃ですが、三月は“春の嵐”が吹き荒れ、思い出したように通り雨がアスファルトの路面を濡らしていきました。街路樹の桜の木には、これから役目を迎える桜の息吹を感じ、眺めていて飽きることがありません。

 

三月の年度末、一年の過ぎるのがいかにも早いと感じている人も多いことでしょう。経営方針が見事に的中し、計画以上のペースで夢中で進んできた人、逆に焦りながら、もう年度末かと眉をしかめている人など、さまざまでしょう。数字にのみこだわる焦りは禁物で、大幅未達や達成でも、冷静に『根本』原因の追及を優先すべきだと思います。

 

未達の場合の原因は多岐にわたるはずですが、「経営環境が悪い。社員の頑張りが足りない」などの他人事の言葉は、同友会で学び実践する会員からは聞こえてきません。同友会では、年初に『今こそ経営者としてのリーダーシップを発揮して全社一丸でこの不況を乗り切ろう』の方針を提起して、収益構造の改善、現状認識の共有、新しい仕事づくり、企業変革支援プログラムを活用しながら同友会の仲間や社員と共に実践することを進めています。

 

冷夏や高温の夏もあります。桜はそうした変化に耐え、成長していきます。環境変化を察知し、対応するのは枝葉でありますが、見えない『根』が活力を生み、成長を支えています。さて、みなさんの『根』とは何なのでしょうか。

 

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